カトリック清水教会聖堂の保存、建替え問題の経緯

年月日 概  要
2014年 清水教会から横浜司教区に「司祭館・信徒会館並びに聖堂建替えに関する許可願い」が提出される。当初は、司祭・信徒館の建替えを優先させるという趣旨の申請がなされる。

2015年10月14日

清水教会より「建設計画変更の許可願い」が横浜教区に提出される。建設計画が「司祭・信徒館優先」から「聖堂建替えの検討」へ変更される。聖堂を「建替える」か「補強工事をして使用を続ける」かで信徒の意見が割れる。

2015年11月19日

清水教会建設委員会から「高い資金を投入しての聖堂補強は断念する」

2015年12月4日

横浜司教区は清水教会としての決定通り現聖堂の維持の断念を承認する。
2017年 清水の建築設計事務所より10回以上にわたって聖堂の克明な調査が行われ、木造による耐震補強の見積り3,600万円が提出される。

 

2017年7月14日 横浜司教(聖堂の所有者)が清水教会を1度目の訪問。
2017年10月19日 川勝知事が聖堂を訪問され「大変美しい教会だ、木造のゴシック建築は珍しい、ぜひ保存してほしい」と言われる。
2017年11月26日 横浜司教が2度目の訪問「善意の第三者を巻き込まないこと」「なるべく早く、信徒の総意を決定すること」を伝えられる。
2018年3月4日 信徒総会で、聖堂の保存・建替えを決めるべきではないとという意見が多く、1年後の信徒総会に持ち越すことになる。
2018年12月9日 横浜司教が3度目の訪問「善意の第三者を巻き込まないこと」に関して依然としてそれが守られていないことを指摘される。
2019年1月18日 カトリック清水教会聖堂保存のための一般有志による署名活動が行われ、約7,800名の方から署名を集める。
2019年1月29日 横浜司教区から「決定通知」として「聖堂を今後どうするかについて、小教区において「信徒の総意」を決定することは困難であると判断し、補完性の原則に則り横浜司教区が行う」という通達が届く。
2019年4月25日 横浜司教区が依頼した横浜の建築設計事務所(以下、Y社とする)による聖堂の調査が行われる。
2019年7月

Y社より横浜司教区に耐震診断の報告書が提出される。

 ・聖堂の耐震診断評点が0.11しかなく耐震強度が著しく低い。

 ・劣化度に関しては、築84年の建物としては予想以上に健全を保っている。但し、外部窓枠はかなり劣化が進んでいる。

 ・聖堂保存の場合、現状から内部耐震補強するしかなく、聖堂内に強固な鉄骨フレーム及び鉄筋コンクリート基礎を設ける必要がある。同時に劣化が進行している窓、扉の改修をすると概算費用94,600,000円、工期5ヶ月を要する。外部補強の場合、バットレスを造り建物を支えるが、教会敷地の現状、特に道路側距離が足りず現実的ではない。このほかに聖堂柱に筋交いをいれ窓をつぶして壁とする工法もあるが、天井面の水平剛性も必要になる。

2020年9月30日 山辺豊彦氏(木構造の専門家)が聖堂を見学され、「内部の空間は保存し、外部からの耐震補強で充分耐震性能が確保できる。外部からのほうが施工費も抑えられる。」
2020年11月19日 土屋和男(日本建築学会東海支部)、塩見寛(静岡県建築士会)両氏が横浜司教区を訪れ、司教に現聖堂の建築的価値を伝え、聖堂保存の「要望書」を提出する。
2020年12月26日 田辺市長が聖堂を見学され「感動した。保存のために市としてできることを考えたい」と言われる。
2021年7月2日 田辺市長、静岡市3名、土屋和男教授、小林靖明連合自治会長が横浜司教を訪問(1回目)し、聖堂保存を訴える。

 

2021年11月27日 田辺市長が横浜司教を訪問(2回目)。3回目の訪問を約束し「文化財としての指定をしたいので調査のため、聖堂の開放をお願いする」。

 

2022年6月14日 田辺市長他4名が横浜司教を訪問(3回目)し、4回目の訪問を約束する。
2022年7月30日

横浜司教区より3名の神父が来て聖堂の説明会が行われ、「聖堂は現地に保存せず、他の場所に移築する場合にのみ、それに応ずる」との結論を伝える。

 ・「横浜司教区の決定は、Y社による耐震診断結果を受け、これまでの経緯やその他の様々な要素を含めた総合的な判断を行った結果である。」

 ・「横浜司教区としては、小教区がこれまでの少なくとも複数回にわたり建て替えるという判断をし、それを前提に20年以上にわたって積み立てを行ってきたことを重要視しており、今回の決定にあたっても、大きな判断材料の一つとなった。」

 ・「教会内部の決定については、信仰共同体という視点から「善意の第三者を巻き込まない」という原則のもと自ら行うべきであり、共同体として一度決定したことは尊重すべきである。」

 ・「もちろん、現聖堂を残したいとする方々の気持ちは理解できるが、<建物ではなく人をもって教会、すなわち教会は何よりもまず信仰共同体である>という観点からみた場合、歴史的・文化的価値については、建設計画を進めていく上で一つの判断材料にはなり得るが、主要な判断基準とはならない。まず共同体が集い、祈ることが教会にとって最も大切なことであり、それを実現するために、建物はより安全で安心、そして信徒一人一人の負担を減らす形が望ましい。教区としては、現聖堂を保存するよりも建替えたほうがその目的をよりよく果たすことができると判断した。」

2022年8月17日

2022年8月19日

聖堂保存の活動メンバーが市の担当者に面会。皆さん「移築しかない」という意見であり、これからは移築をいかにするかを具体的に検討することになる。

土屋教授は「移築しても文化財としての価値を保持することは可能である」。

2022年12月5日

市議会で堀努議員が聖堂の貴重さと、移築に向けた市の積極的な関与を訴えた。

 2022年11月定例会 カトリック清水教会の保存と活用 質問者 堀 努

 Q カトリック清水教会は歴史的・文化的価値が高いかけがえのない地域資源であり、保存すべき歴史的建造物であると考える。所有者は、老朽化を理由に取り壊そうとしたが、解体移築へ判断が変わった。しかし、保存に向けては課題が山積みであり、市の積極的な関与が必要であるが、教会の歴史的・文化的価値をどう捉え、保存と活用についてどう考えるか。

 A 本教会は歴史的価値のある地域のシンボルとして大切に保存すべきである。地元住民の要望を受けて所有者と協議し、市民団体による移築保存について調整を図った。移築だからこそできる活用方法を見出し、みがきあげていくことが大切と考えている。

 「しずおか市議会だより」2023年2月1日発行

2022年12月10日 村松友視氏(直木賞作家 子供時代カトリック清水教会の近くに在住)が聖堂を見学され、「聖堂の内部を見るのは初めて。感動した」と話される。
2023年1月28日

聖堂保存活用検討委員会を開催

2022年7月30日に横浜司教区より「他の場所に移築する場合にのみ、それに応ずる」という通達を受けて、今後の活動を検討・協議する。

2023年4月21日 一般社団法人カトリック清水教会聖堂を活かす会(以下、活かす会)を設立し、本格的に解体・移築・保存・活用のための活動を開始する。
2023年7月10日 司教区と活かす会は「聖堂の無償譲渡に関する覚書」を締結し、聖堂を解体し、更地にすることが明記される。